分娩ってどんな流れ? 初産婦と経産婦では所要時間が違う?
インタビュー
妊娠・出産
分娩ってどんな流れ? 初産婦と経産婦では所要時間が違う?
お産が近づくにつれ、不安が募る妊婦さんは多いのではないでしょうか。無事に赤ちゃんが誕生するまでのお産の流れを産婦人科医・芥川先生にお聞きしました。
2018.6.22
あとで読む
分娩所要時間とは?
分娩所要時間は、本格的な陣痛開始から、胎児と胎盤が母体の外に出るまでの時間を指します。陣痛の開始は、医師が内診や陣痛の内容をみて判断します。
一般的に分娩は、陣痛か破水によって始まり、陣痛が先の場合は規則的な痛みを繰り返し、陣痛間隔が10分になったタイミングが本格的な開始時点とされます。
とはいえ、お産の経過には個人差があり、数日前からの前駆陣痛があったり、陣痛が10分間隔になったけれど途中で急に停滞するといった想定外のこともあります。このため厳密に決定するのは難しく、あとで妊婦さんと話し合って決めることもあります。
分娩所要時間を母子手帳に記載する理由は、そのお産が“正常か異常か”を医療従事者が把握するためです。
正常な分娩の所要時間は、初産婦であれば11~15時間、経産婦は初産婦の約半分である6~8時間が標準とされています。これを長時間逸脱すると、リスクの高いお産(遷延<せんえん>分娩といいます)となり、初妊婦で30時間以上、経産婦で15時間以上が目安になります。とはいえ遷延分娩が問題になるわけではありませんので、安心してください。
分娩の流れを教えてください
医学的には、分娩は3つの流れがあります。
陣痛間隔が10分になり、子宮口が全開になるまで(分娩第1期)。そこから赤ちゃんが出るまで(分娩第2期)。そして胎盤が出るまで(分娩第3期)です。
初妊婦と経妊婦とでは所要時間が違ってきます。
●分娩第1期…子宮口が全開の10㎝に開くまで。初産婦で10~12時間、経産婦で5~6時間。
●分娩第2期…分娩台に移って赤ちゃんの娩出(べんしゅつ)に備えます。初産婦で1~2時間、経産婦で30分~1時間。
●分娩第3期…初産婦で15~30分、経産婦で10~20分。
お産がもっとも長く辛いと感じるのは、子宮口が全開になるまでの分娩第1期です。
一定の速度でまんべんなく開くわけではなく、最初はゆっくりゆっくり開き、8時間前後かけて2~3㎝程度というのが一般的です。しかし、4㎝前後開いたあたりから一気に速度を上げて子宮口が開きます。陣痛間隔も狭まり、それにともない子宮口は全開近くになって赤ちゃんの頭が骨盤内に降りてきます。この経過をフリードマン曲線といいます(下記参照)
つまり、妊婦さんは子宮口が4㎝前後に開くまでの潜伏期がひとつの踏ん張りどころで、ここまでくればお産の半分以上が経過したともいえます。初めてのお産をひかえている方は、この流れを知っておくと助産師の介助も理解でき、また「陣痛は永遠ではなく、着地点が必ずある」ことがわかり、頑張れると思います。
<フリードマン曲線>
このグラフは正常な分娩かどうかを判断する一つの目安になり、医師やスタッフは、妊婦の体力消耗をみたり、医療処置の見きわめをする際などに役立てています。
分娩に備えて準備することは?
妊娠中期から、安産につなげる呼吸法を練習しておくとよいと思います。
呼吸は「吸う」よりも「吐く」方を重視します。吐く方を優位にするとβ―エンドロフィンという脳内ホルモンが大量に出て、「疲労、緊張、不安や恐怖」の負の連鎖を絶つことに有効です。
β―エンドロフィンは体の緊張をほぐしたり、痛みをうまく逃したりするのに役立ち、体と心がリラックス状態になるので、安産につながるケースが多いのです。
逆に、「疲労、緊張、不安や恐怖」が重なると、下記の要因からお産が長引く原因になってしまいがちです。
●余計に痛みを感じやすくなる
●筋肉がかたくなり、体力も消耗する
●骨盤や産道まわりの動きが低下し、子宮口もなかなか開かない
吐く呼吸は、平時には簡単にできますが、激しい痛みや緊張でパニック状態の時は息を止めがちになるので、「吐く」ことが意外に難しくなります。そんななかでも意識的にしっかりβ―エンドロフィンを出すためには、妊娠中からの練習が大事です。
ほかに自分できる準備としては、以下のようなものがあります。
●長丁場になる陣痛時の過ごしかたを具体的にイメージしておく
●「これがあると落ち着く」というものを探しておく。好きな香り、ぬいぐるみ、ペットの写真、大人の塗り絵など
●安産体操やアロマ分娩講習会、母親学級などに参加して、助産師や看護師と顔なじみになっておく
●お産の流れを確認しておき、安産のイメージトレーニングをしておく
芥川先生より まとめ
妊娠中から具体的なイメージを持って準備された方は、順調にお産が進むケースが多いですね。お産の最中には想定外なことも起こりえますが、安全に分娩が終了するまでは、私たちスタッフが全力でサポートします。安心して、感動につつまれたお産を経験してください。
芥川 修 先生(芥川バースクリニック 院長)
1998年、東京医科大学卒業。東京医科大学講師、東京医科大学産科婦人科学教室 医局長を務めた後、2013年、川崎市麻生区に芥川バースクリニックを開院。
現在、東京医科大学と東京家政大学の非常勤講師も務める。
医学博士、日本産婦人科学会認定医、日本周産期新生児医学会暫定指導医ほか。
大学病院勤務時からハイリスク出産に長く携わる。「二人目も先生に取り上げてもらいたい」と、遠方から足を運ぶ経産婦も多い。
また、クリニックでは出産後の産後ケアをはじめ、婦人科全般までフォロー。女性の一生にわたる健康生活をサポートしてくれる。
≫ 芥川バースクリニック
あとで読む