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【40代の不妊治療】卵子の大きさにばらつきがあると言われました。改善方法はある?

コラム 不妊治療

【40代の不妊治療】卵子の大きさにばらつきがあると言われました。改善方法はある?

ちょうど40歳を迎え、初めての体外受精に挑むネモフィラさん。卵子の大きさにばらつきがあること、今後の治療方法について疑問を抱いているそうです。別のアプローチ法などについて浅田レディースクリニックの浅田義正先生に伺います。

2019.9.30

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※2019年8月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn」の記事です。


ネモフィラさん(40歳)からの相談
●相談内容
5月で40歳になりました。AMHは1.36ng/ml。3年前に測定した時は年齢の平均値より高かったのですが、下がるペースが早いようです。今回初めての体外受精で、D3で卵子が12個見えフェリングⓇ300Uでアンタゴニスト法をスタート。しかしD8で卵子が6個しか成長していないと言われました。しかもばらつきが大きく、4個は成長が早いのに2個は少し遅れぎみとのこと。理由は「AMHが低いから最初から質が悪かった」と言われたのですが納得がいきません。卵子の成長にばらつきがあるのなら、前周期からピルを飲むなど、今後の改善方法はないのでしょうか?

●これまでの治療データ
【検査・治療歴】体外受精(1回め)、AMH :1.36ng/ml
【妊娠歴】なし
【精子データ】きわめて良好
【サプリメントの使用】なし

Doctor’s Advice
●前周期からのホルモン調整にトライを
●同じ方法でも薬を変えるなどの工夫も必要
●受精卵が育ったら凍結して凍結融解胚移植を

お話を伺った先生のご紹介

浅田 義正先生(浅田レディースクリニック)


名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の勝川、名古屋駅前のほか、今年5月には東京・品川駅前にもクリニックを開院。

≫ 浅田レディースクリニック

ーー3年前からAMHがかなり下がってしまっていることを気にされているようですが、これはこの先の治療で問題になりますか?


AMH(アンチミューラリアンホルモン)検査は、今後の治療方針を決めるうえでの画期的な検査方法です。昔は15%ほどの測定誤差があると言われていましたが、それがだんだん少なくなり、かなり精度が上がってきました。それでわかったことは、測定した日によって値にばらつきがあるということ。たまたまその周期だけ値が低かったということもあります。血圧も測定した日によって誤差があるのと同じですね。ですからネモフィラさんの値にも誤差があるはずで、現在40歳で1・36 ng / mlということであれば、さほど悲観的になる数値ではないと思います。


ーーAMHが低いから、もともと卵子の質が悪かったと言われたことに、疑問を抱いていらっしゃるようです。


ここは確かにネモフィラさんが疑問を抱いても致し方ないでしょうね。AMHは原始卵胞から胞状卵胞に発育する過程で分泌されるホルモンで、卵巣の中にどれだけの卵子が残っているかの目安(卵巣予備能)となり、決して“卵子の質”を測っているものではありません。卵子はネモフィラさんの体の中に40年も生き残っていた細胞の一つで、それが半年前から育ってくるわけです。卵子の質は、年齢と比例していて卵子の老化の程度、つまり年齢が大きな要素となります。


ーー卵子の大きさにばらつきがあることを気にされています。先生ならどのような治療を提案されますか?


卵子というよりも卵胞の大きさのことだと思います。卵胞の大きさは、もともとある程度ばらつきがあるものです。では、なぜばらつきがあるかというと、卵胞は半年前から育ちはじめ、後半の3カ月からホルモンが成長に左右するので、前の周期からのホルモンの影響を受けています。今回のネモフィラさんの経過を見ると、そもそもAMHが低めだと、エストラジオール(E 2=卵胞ホルモン)も下がっている可能性があり、その反動でFSH(卵胞刺激ホルモン)、L H(黄体化ホルモン)の値が上がってきます。自分のホルモンがすでに上がってきている時に注射を打っても、卵胞がすでに育ち始めているので、スタート時点でもう卵胞の大きさがそろっていないということになります。移植方法についての記載はありませんが、さらに新鮮胚移植をしようとする場合、一番大きい卵胞に合わせて採卵しなければ妊娠率は上がらないので、ほかの卵胞は使いものにならないということになります。
そこで、前周期からホルモンの状態を整えて、卵胞の大きさがばらつかないように工夫する必要があります。ピルを飲むとよいのでは?との質問ですが、確かにピルも不妊治療に使われる方法の一つです。ただ、ピルは場合によって効果が出すぎることがあるので、卵胞ホルモンと黄体ホルモンを補充するカウフマン療法で、私は調整しています。


ーー今回はアンタゴニスト法で刺激をされたようですが、ほかにネモフィラさんに合った刺激法はありますか?


当院の場合、AMHが2.0 ng / ml以上であればアンタゴニスト法、1.5 ng / ml前後ならショート法、1.0 ng / mlならクロミフェンの服用をおおよその指針としていますが、年齢や既往症なども考慮して患者さんにとってベストな刺激法を考えます。
ネモフィラさんのAMH値と年齢、今回の採卵数を考えると、引き続きアンタゴニスト法でも悪くはないと思います。今回はD 3からHMG製剤のフェリングⓇ300Uを使って排卵誘発を行ったようですが、次はその時の血中のL H、FSH、E2の測定値を見ながら注射の量や種類を変えていくのも一つの方法でしょう。排卵誘発の方法はひと通りではありません。たとえるなら、同じ料理を作るにしても、素材の状態によって味つけや焼き方を変えるように、毎回経過を追い、患者さんのホルモン状況も考えながら、排卵誘発の方法を変えていくのが医師の力量だと思います。
あるいは、AMHの数値から見るとショート法を試すのもいいかと考えます。月経開始と同時にGnRHアゴニストという点鼻薬を使用しFSHとL Hが大量に分泌されるフレアーアップ現象を利用して卵胞の発育を促すという方法になります。
そして、次は採卵になりますが、これも一筋縄ではいかず、大変難しい作業になります。30年間体内で保存された卵子と40年保存された卵子では成長の差があります。成熟卵を採卵するということは、永い間休眠状態にあった遺伝子の再稼働を見ていくということで、これも患者さんごとに経過をきちんと追ってベストな日で成熟卵を採卵することが必要です。ここで、卵子の大きさが整って、採卵数も多いのが理想です。当院であれば、採卵後、体外受精させた受精卵をすべて凍結する受精卵全凍結(freeze all)を行い、次の周期から凍結融解胚移植を行っています。現在では新鮮胚移植より凍結融解胚移植のほうが妊娠率がよいことが分かっています。
ネモフィラさんの場合、まだいろいろなアプローチが考えられるので、まずは卵胞の大きさのばらつきを整えて、できるだけ多く採卵できる方法を考えてくれるクリニックを選んでみてください。


先生から
刺激法も採卵日も人によりそれぞれ。
経過を追いながら治療方針を考えられる病院選びを



出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn
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