【ERAのこと教えて】着床率を上げるための子宮内膜検査
コラム 不妊治療
【ERAのこと教えて】着床率を上げるための子宮内膜検査
体外受精の治療で受精卵を子宮に移植する時、子宮が着床に適切な状態かを遺伝子発現レベルで調べるERA(エラ・子宮内膜着床能検査)。最新のテクノロジー検査をいち早く導入する、松本レディースクリニック副院長の松本玲央奈先生にお話を伺いました。
※2019年8月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn」の記事です。
- Doctor’s Advice
- ERAは積み上げてきた実績と高い解析力が
世界中で信頼されている検査です
患者さんの適切な移植日が科学的にわかるERA
ERA(子宮内膜着床能検査)は、子宮内膜が受精卵を受け入れる状態かどうかを調べる遺伝子検査です。受け入れが整っている状態を“着床の窓が開いている”といい、通常移植はこの時期に行います。移植を繰り返しても着床しないケースは、実は遺伝子レベルで着床の窓と移植日にずれがある場合があります。これまでは解析する手段がありませんでしたが、ERAによって、移植予定日の患者さんの子宮内膜を採取するだけで、着床の窓と移植日のずれが科学的にわかるようになりました。たとえば「予定日は適切」「予定日より▲日早すぎる・遅すぎる」というようにです。しかも、12時間のずれまで的確な指示が出ます。これによって患者さんの適切な移植日が定まり、妊娠の可能性を高めることが期待できます。
当院がERAを導入したのは2018年の夏で、ちょうど1年経ちます。これまでに検査を受けられた患者さんは200人以上で、当院を卒院された患者さんから「ERAをやってよかった」という声が多数寄せられています。
移植に初めて臨む患者さんもERAを希望するケースが増加
患者さんにERAをご提案するタイミングは、受精卵が凍結できた時です。検査を受けられるのは、他院で何度も移植に失敗された方や、移植する受精卵が極めて少ない方など、着床に難題がある方々です。検査を受けられた後は「もっと早くこの検査を知りたかった」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
一方、初めて受精卵を移植する方もかなりの数で検査をご希望されます。大切な受精卵を無駄にしたくない、やれることはすべてやりたい、自然妊娠しないのは着床に問題があるからかもしれないなど、理由はいろいろです。ERAはもともと着床不全の方に向けた検査ですが、移植が初めての方もご存じなのは、当院が“着床外来”を専門に設けているからでしょう。
最新の検査と基礎研究を生かし未解明の着床問題に立ち向かう
当院ではERAと同時に子宮鏡検査とEMMA/ALICE(通称エマ アリス)を受けていただくことができます。これらの検査をする理由は、移植する子宮環境もよくして着床の可能性をより高めるためです。
子宮鏡検査では子宮内を観察し、ポリープや子宮腺筋症など、着床を妨げる病変を調べ、異常があれば直ちに治療します。EMMA/ALICEは子宮内膜に炎症を起こす菌があるかを調べる検査で、悪さをする菌がいれば結果レポートで推奨された抗生剤で治療します。
着床分野は解明が難しい部分がまだ多いのが実情です。未解明な部分に立ち向かうためには、たくさんの治療法を用意することが重要です。その手段として最新の遺伝子検査ERAや、EMMA/ALICEが役立っています。
子宮内膜着床能検査ERA(Endometrial Receptivity Analysis) は我々が独自に開発した検査です。2009年に特許を取っていますが、昨年から名前も似ている検査が市場に複数出てきています。技術的にERAと同等の検査をほかでも開発できるのかどうかについて、お話ししたいと思います。
世の中の遺伝子検査のほとんどはDNA検査
世の中の遺伝子検査にはDNA検査とRNA検査の2種類しか存在しません。
DNAとは私たちの体を構成するすべての細胞に存在し、このDNAの情報に基づいて体の細胞、器官、臓器がつくられているため、「生命の設計図」とも呼ばれています。ヒトのDNAはほとんど共通していますが、0.1%程度に違いがみられ、それが個人の多様性を生み出しているといわれています。
両親から受け継いだ生涯変わることがない個人の遺伝子情報、つまり体質を調べるのがDNA検査です。DNA検査では習慣病のリスク、薬の副作用の出やすさ、運動、代謝能力などがわかります。これにより、将来かかる可能性のある病気を予防したり、個人の体質に合う効果的かつ適切な薬を選択したりすることができ、最近では美容分野において肌の特徴などをみて化粧水を推奨するサービスもあるようです。
臨床の応用としては、新型出生前診断や着床前スクリーニング、個別化医療のためのがん検査がよく知られています。これらのDNAを用いた検査は比較的に単純で検査原理が容易であるため、模倣するハードルが低く、新しい検査が出てもすぐに後発品が出てきます。検査会社として差別化できるのは、世界規模の多国間臨床試験による有効性の検証があるかどうか、また検査結果に推奨される処置がしっかり記載してあるかなどにあります。
ほとんどコピーできないRNA検査技術
精度の高い検査技術を提供したい我々の想い
ERA検査は日本で導入されてから2年経たずに200近くの施設で採用していただきました。多くの反復着床不全の患者様に貢献し、国内のみならず、アジア、または世界中でも話題になっております。不妊治療にかかわる遺伝子検査を提供している会社が、戦略的に着床の窓の検査を開発することは理解できますが、ERAほどの精度に短期間で追いつくことはできず、まして遺伝子の数を落とすことで精度自体も落としたものを提供することは、大事な胚をリスクにさらすことにならないか心配でなりません。
ERA検査は「着床の窓」を特定するために我々が独自に開発した検査であり、その精度や正確性も日々進化を続けています。正確で精度の高い「着床の窓」を特定するためにはERA検査をお受けください。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn
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