【Q&A】採卵できるようになるには-浅田先生
専門医Q&A 不妊治療
【Q&A】採卵できるようになるには-浅田先生
早期卵巣機能不全と診断され、採卵にも至らず、どうしたら良いでしょう? 浅田レディースクリニックの浅田義正先生にお答えいただきました。
相談者:mintoさん(30歳)
結婚して一年が経つ30歳女です。
約8年前、早期卵巣機能不全と診断されました。
結婚してすぐに東京の専門病院まで福岡から通い、半年頑張りましたが採卵にも至りませんでした。
私はまだ諦めたくないので再度治療を始めるべく貯金しています。
6歳年上の夫は、子どもが欲しいが自分が60歳になる時に子どもが成人できるようにしたいと言っています。なので、逆算すると残り4年しか不妊治療ができません。
夫は養子を考えているそうですが、私は自分の子どもを産みたいです。
今は漢方や薬を飲みながら普段の生活を気をつけてはいますが、あるかどうか分からない卵子をあと4年以内に育たせるには、どうするのが一般的なのでしょうか。
注射を打ちながら育つのを待つだけではなく、何か他に方法がないのか模索しています。
早発卵巣不全での採卵について
8年前の22歳頃に早発卵巣不全と診断されたそうですが、非常に早期の早発閉経ということになります。
一般論ですが、早発卵巣不全の場合、生理が不整になった初期の頃から2年程度は、不妊治療が割としやすく、採卵ができる時期もありますが、その時期を過ぎると採卵することも非常に難しくなると言われています。
早発卵巣不全に対する治療法は確立されていないため、医師により治療方法は異なります。
下垂体ホルモンを完全に抑制させ、ホルモン注射を大量に投与する治療方法もありますが、 高額ながらあまり有効な治療法ではないと私は考えています。
当院では、早発卵巣不全とは、卵巣が十分機能しておらず卵胞ホルモンが少ないため、脳下垂体のFSH、LHの値が卵胞ホルモン低下のフィードバック作用で上昇しすぎてしまい、更年期状態になっているため卵胞が育つホルモン環境にない状態と考えています。その考えのもと、まず卵胞ホルモンと脳下垂体ホルモンをコントロールして卵胞が発育するホルモン環境を作り、卵巣内に残っている卵子が発育するのを待つ、という治療を最終手段としています。
卵胞は原始卵胞から成熟卵胞に発育するまでに6ヶ月かかります。その後半の3ヶ月はホルモンに依存して発育しますので、最低3ヶ月、できれば6ヶ月はホルモンをコントロールして卵胞が発育するかどうかを観察します。全く卵胞が発育しなければ、卵巣内で育ち始める原始卵胞がほとんど無いと判断して、治療終了を考えていきます。
ただ、早発卵巣不全の人は年齢が若いので、もし卵胞が育ち受精卵ができれば、その年齢に見合った妊娠率が得られ、高齢の人と比べ高い妊娠率が期待できます。
そのため、若い人と高齢の人では早発卵巣不全の治療終了時期は当然、違ってくると思います。
今まで経験された症例は・・・?
私の苦い経験ですが、奇跡の妊娠を経験したことがあります。
その患者さんは30歳前後で閉経して、数年後に当院に来院されました。最初の頃は少し採卵もできましたが、そのうち1個も採卵できなくなり、それが2~3年続きました。私が何度も“治療をやめましょう”と伝えましたが、その患者さんは諦めず、37歳の時に1個の卵子を採ることができ、受精卵になり凍結をしました。その後1~2年採卵を続けましたが1個も卵胞は発育せず、結局38歳の時に以前凍結した受精卵1個を移植し39歳で出産されました。実は同じようなケースがもう1名いらっしゃり、計2名の奇跡の妊娠を経験しました。
私が何度も“治療をやめましょう”と言い続けたにも関わらず、治療を継続された患者さんには非常に苦しい思いをさせてしまった、と反省する症例でした。
このようなケースは非常に稀ですが、無い訳ではありません。ただ、一般的には簡単な治療ではなく、結果も簡単にでるものではありません。
当院では、ホルモンをコントロールして残っている卵子があれば、それを上手く治療に活かしていくことを治療を最終手段としています。