【Q&A】エストラジオールの数値について-浅田先生
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【Q&A】エストラジオールの数値について-浅田先生
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)で重度の排卵障害。卵胞が育ってきているのにE2が低いのはなぜ? 浅田レディースクリニックの浅田先生にお答えいただきました。
相談者:しゃけさん(37歳)
私はPCOSで重度の排卵障害です。ゴナールエフとHMGでの刺激をして、タイミング法で治療をしています。なかなか排卵せずにリセットになってしまうことも多いのですが、前回初めて無事に排卵しました。しかし結果は化学流産となってしまいました。
今回の周期は、前回と同様に注射での刺激をし、卵胞が14ミリまで育ちました。その他いくつかの卵胞も少し大きくなっていました。しかし、血液検査の結果、エストラジオールは21.5でした。そして微量ですが出血もあります。ちなみに、前回排卵した周期では順調に卵胞が育った為、血液検査していません。
刺激して卵胞が育ってきているのにE2が低いままというのは、どういう状態なのでしょうか。
浅田先生からの回答
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方は、途中まで育った卵がたくさん卵巣に残っており、その中でそのまま育つ卵胞もあれば、しぼんでいく卵胞もあります。ヒトの場合、“一人”の赤ちゃんが生まれるように数が調節され、最終的に一個の卵胞が排卵されます。他の多くの哺乳類では、多くの卵胞が排卵されますが、ヒトはそこから進化し一人の赤ちゃんを産む仕組みになっています。誤解していただきたくないのは、“質”を選んでいるのではなく、“数”を調節しているだけである、ということです。
PCOSの特徴としては、いろいろな遺伝子の作用によって、なぜか途中で卵胞の発育が止まりやすいこと、無理に卵胞を発育させようとすると一斉に発育するということが挙げられます。卵胞では、卵の周りあるいは卵胞の壁にある顆粒膜細胞という細胞が、エストラジオールを放出します。ですから、卵胞が育つに従ってエストラジオールはどんどん高くなり、若い方では250~300pgで一つの卵胞が成熟した段階になるといわれています。しゃけさんの場合、エストラジオールが21.5ということは、実は卵胞のように見えている14ミリの卵胞の中の細胞が十分に働いておらず、これからも順調に育つことはないと判断できます。むしろ前の周期の名残のような卵胞だと考えた方が良いでしょう。
このように、卵胞の見た目と実際の発育の具合は、一致しないこともありますし、PCOSの方の場合には、卵胞がたくさん見えていてもエストラジオールが低いという特徴もあります。
ただ、発育はしにくいものの、適切な体外受精を行えば、多くの受精卵を一度に採ることが可能です。しかも、現在の新しい方法では卵巣過剰刺激症候群も起きないので、一生に一度の採卵で済むことはPCOSのメリットだと言えるでしょう。
PCOSの治療に慣れた施設で、適切な治療を受けていただきたいと思います。