卵管鏡下卵管形成術について
インタビュー 不妊治療
卵管鏡下卵管形成術について
妊娠しない原因の一つとされる卵管の問題。実際にどれくらいの確率でみつかるのでしょうか。また、卵管に問題があった場合、治療の選択肢の一つになる「卵管鏡下卵管形成術」とは?プリュームレディースクリニックの松本由紀子先生に教えていただきました。
卵管鏡下卵管形成術(FT)について みけこ♪さん(33歳)
タイミング法から妊活を始め、10カ月が経ちました。今のところ検査で気になっているのは、卵管の片方が通りにくいことです。先日、雑誌で卵管の詰まりを改善する卵管鏡下卵管形成術(FT)という手術があることを知りました。あまり聞かない手術ですが、ご経験のある方や、この手術で「30代でも妊娠できたよ〜」という方はいらっしゃいますか?近所の不妊治療専門病院では行っていないようで、情報もあまりありません。
卵管が狭くなったり、詰まっている方は多いのでしょうか?
当クリニックでは、妊娠を希望して1カ月という方や、基礎体温をつけながらタイミングを試みている方など、おもに自然妊娠を希望される20〜30代の方が来院されます。そのなかで、明らかな不妊症とまではいかなくても「早めの受診で、確実に妊娠に近づきたい」という思いをお持ちの方は多く、最初の検査で卵管造影検査を希望される方が増えています。その結果、少なくとも40〜50%の方に卵管の両側や片側が詰っている、あるいは狭くなっているなどの異常が見つかっています。一般的に卵管に原因がある方は30〜40%といわれていますが、実際はそれより多いと感じています。
卵管鏡下卵管形成術(FT)はどのような治療法ですか?
卵管鏡といわれる直径1mmの細いカメラを使用した手術です。カメラで卵管内を観察し、カメラの周りに付いた柔らかいバルーンカテーテルで、卵管の狭くなっている箇所や、詰まっている箇所を広げて卵管の通りを改善します。手術中は静脈麻酔薬を使いますので痛みはありません。生理後〜排卵までに行い、手術後すぐの排卵のタイミングから自然妊娠が望めます。広げた箇所は再び狭くなったり、詰まったりするなど再発の可能性がありますが、手術後70〜80%の方は3〜4カ月以内に妊娠されています。20代で40%、30代前半の方では30〜40%の妊娠率が期待できます。
手術のリスクや副作用はあるのでしょうか?
リスクとしては、ごくまれにカテーテルを通すときに卵管に小さな穴が開くことがあります。ただ、卵管が極度に硬い方などに限られた稀なケースです。卵管鏡で観察しながら行いますので、通常は事前にリスクを回避できます。もしも穴が開いても経過観察のみで自然に治ることがほとんどです。また、麻酔薬のアレルギーや気分が悪くなるなどの副作用についても、あらかじめ詳しい問診を行なったうえで、その方に合わせた麻酔薬を処方しています。手術後に軽い症状があってもすぐに消えますので、ご心配ありません。
どのような方が手術の対象になりますか?
卵管のほかに妊娠しにくい原因がない方が対象です。たとえば、明らかに卵管の両側が詰まっていて、それ以外の検査で異常が見つかっていない方は、この先、妊娠できる確率はかなり低くなります。FTを受けられたほうがいいでしょう。また、卵管が狭くなっている方は2〜3カ月間はタイミング法などで様子をみるのも一つの選択です。ただ、先ほどお話ししたように、体や費用面でも負担の少ない手術ですから、当クリニックではこの期間を待たずに手術を希望される方がほとんどです。
一方で、FTと体外受精の選択に悩まれる方もいらっしゃいます。ご主人の精液所見に明らかに問題がある場合は、最初から体外受精の適応になります。また、40代以上の方はいろんな意味で自然妊娠がむずかしくなります。時間的なことも考えると体外受精のほうが有効な場合もあります。たとえば、これから体外受精を検討したり、また、その一歩が踏み出せないという方は、体外受精の準備や検討している周期にFTを試されるのもいいと思います。その結果によって、納得して体外受精に進みやすくなると思います