多嚢胞性卵巣なので日常生活に気をつけ鍼灸にも通っていますが、漢方も効果があるの?
コラム 不妊治療
智 さん(22歳)
多嚢胞性卵巣でフェマーラが効きません。3年の不妊治療の末、一人目を初めてのフェマーラ服用の自然妊娠で授かることができました。 そして9 月に断乳をして即治療を始めましたが、今回は小さい卵ばかりでダメでした。『ジネコ』で話題になる多嚢胞は「食生活を変えるとよい」に納得し、食生活を変えて鍼灸院に通い、なるべく運動もしています。そして今、漢方も興味があるのですが、多嚢胞に効果はあるのでしょうか? とにかく排卵までこぎつけて、治療の第一歩にしたいのです。
どのタイプの多嚢胞性卵巣症候群なのかよく検査した上で漢方薬を試して
東洋医学的に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) になりやすい体質の方は、生殖機能と密接な関係のある腎気が弱っている「腎虚」、消化機能が低下をしている「脾胃虚」、貧血やめまいがある「血虚」、月経痛がつらく肌荒れがある「瘀血」、不安感や不眠、イライラ感の強い「気滞」があると考えます。
漢方薬で男性ホルモンやLHの値を改善しホルモンバランスを整えることが期待できる
不妊症の方は基本的に「腎虚」体質が多いので、まずは腎気を補うことが大切です。一人目の出産で腎気がかなり消耗しているところに育児が加わり疲労が蓄積しているので、消耗した腎気を戻すことが困難な状況になっているようです。腎気を戻すためには食事は豆類を積極的に摂ることです。また、睡眠も大切です。育児で睡眠時間を確保するのは難しいと思いますが、夜の寝不足は30分くらいの昼寝でカバーしましょう。PCOSの診断基準は、①月経異常、②多嚢胞性卵巣、③血中の男性ホルモン高値またはLH基礎値高値かつFSH 基礎値正常(日本産婦人科学会の診断基準による)のすべてを満たす場合となります。漢方薬で改善効果が期待できる項目は、③の男性ホルモン値やLHの値を改善し、ホルモンバランスを整えることです。そしてその効果が一番期待できるのが、温経湯という漢方薬です。温経湯は不妊治療でよく使用される漢方薬で、経絡を温める効果があります。
当てはまらないPCOSでも温経湯は効果があることが実証されている
ほかにも温経湯には、脾胃の弱い体質、血液の不足している血虚、血液循環の悪い瘀血も改善してくれます。つまりPCOSの人が持っている症状をすべてカバーする漢方薬と言えます。また、東洋医学的な体質に当てはまらない、PCOSの人にも効果があることが実証されているので、安心して服用できます。男性ホルモンが高いタイプの人には、芍薬甘草湯もおすすめです。筋肉の痙攣や痛みの症状に効果があることで知られている漢方薬ですが、男性ホルモンやプロラクチンの値を下げる効果が実証されています。智さんがどのタイプのPCOSかわかりませんが、よくタイプを検査した上で漢方薬を試してみてください。
神薗 克也先生
芝浦工業大学工学部卒、日本鍼灸理療専門学校卒、鍼灸師、医薬品登録販売者。不妊鍼灸ネットワーク会員。
2004 年翠明館治療室を開設。2009年より漢方専門薬店を併設。不妊症や月経不順、PMS など婦人科疾患を中心に、鍼灸と漢方を用いて、体の内外より総合的に治療を行っている。