胚培養士とは? その役割の重要性を知ろう
まとめ 不妊治療
※ジネコフリマガ秋号(8/25発刊)特集テーマは「チーム医療」です。
高度生殖医療には欠かせない存在、胚培養士。
不妊治療を受けている人にとって身近な存在ですが、具体的にはどんなことをしているのか、治療にどれだけの影響をおよぼすのかについては、妊活ビギナーの方はイメージが湧きにくいのではないでしょうか。
今回は、治療のなかで重要な役割をもつといわれる胚培養士の仕事内容についてご紹介します。ぜひ読んでみてください!
胚培養士はどんな仕事?
"採卵するタイミングについては100%医師に責任があります。培養は100%胚培養士。卵を戻す時は50%ずつの責任です。受精卵が育つかどうかは、胚培養士の能力と技術にかかっているところがかなりあります。顕微授精では卵子に針を刺すという、ミリ単位以下の作業になります。これは知識がいくらあるかということより、胚培養士の技術にかかっているのです。"
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胚培養士の教育体制は?
"当院は厳しいですよ。ものすごく細かいステップで試験をくり返して、ある程度間違いなく扱えるようになれたら、たくさんの卵子のうちの何個かを顕微授精させられるようになるとか、実践できるまでに多くの段階を踏んでもらいます。そうして徐々に段階を追って、3年間で学習していくわけです。ベテランの人でも、毎月、個人個人の受精率を出して、一定以上の成績でない人には辞めてもらう場合もあります。 また、教育の時は、上司の胚培養士と一緒に仕事をして覚えていきます。いろいろな段階の技術を持った胚培養士がたくさん必要なんです。”
“仕事を覚えるまでは、必ず2人1組で作業しますね。当院のラボの顕微鏡は、外の人がモニターで見られるようになっていて、上司が必ず作業をチェックしています。また、何かアクシデントが起きてしまった時にも、対処できる胚培養士がすぐに代わって作業できるようにしているんです。"
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デリケートな管理で卵子、精子、受精卵を守る
クリニックに卵子や精子を預けて人工授精や顕微授精をしてもらうというのは、治療を受けるカップルにとっては体を預けるのと同じ意味をもちます。
それだけに、ドクターだけでなく、卵子、精子、受精卵の管理・作業を行う胚培養士も重い責任を負いながら作業に取り組んでいるようです。
“ジネコ:現在、胚培養士は11名いらっしゃるということですが、技術のスキルアップも安全管理同様、徹底されているのでしょうか。
京野先生:卵子や精子、受精卵は、本来は体内にあるものですから、インキュベーターの中では温度を常に37℃に保つほか、炭酸ガスの濃度や浸透圧も厳密に管理しています。
それを、たとえば室温25℃のところに出したら、12℃も寒い環境の中にさらしてしまうことになります。ですから、外に出したら正確かつ迅速に作業を済ませ、インキュベーターの中に戻さなければなりません。2~3℃温度が変わっただけでもダメージを受けてしまうデリケートなものなのです。
また、受精卵を吸うピペッティングや顕微授精の操作も、受精卵にストレスをかけないよう微妙なさじ加減が要求されます。「常に卵子や精子、受精卵の身になって作業するように」、これはいつも胚培養士に言い聞かせていることですね。手技が合格かどうかは主任がチェックしていきますが、当院では、精液検査ができるまでに1年、顕微授精や胚を凍結するまでには最低3年かかります。胚培養士はそれだけ重要な作業を担当しているということですね。
ジネコ:クリニックの妊娠率を上げるために、ラボの力は欠かせませんね。
京野先生:ラボの力は大きい、というより一番大事なのではないでしょうか。当院では胚培養士も、少なくとも1年に2~3回は学会に出席させ、発表もさせています。海外を含め、他の施設を見学する機会にも、必ず同行させるようにしていますね。自分のラボだけではなく、外でもさまざまな情報を見聞きして、常にモチベーションをキープすることが大切だと思っています。
また、当院では2~3週間おきに受精率や胚発生率、妊娠率などの成績のデータを出しているのですが、もしも一定の基準が落ちてきた場合には、すぐにラボの点検に入り、何が悪かったのか問題点を探すようにしています。胚培養士ごとに顕微授精の成績も出すようにしています。”
“他の施設から医師を呼んで診察からラボまで見てもらい、客観的な意見も聞くようにしています。胚培養士も医師も、一人ひとり緊張感をキープすることが、必ずいい成績につながっていくと思いますから。”
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胚培養士は体外受精とその関連技術のプロフェッショナル
"胚培養士歴14年。培養室業務や患者様への説明をはじめ、培養士の育成、セミナー講師なども務めます。欧州生殖医学会やアメリカ生殖医学会などの海外の学会に参加して最新技術を取り入れ、自らも研究発表を積極的に行なっています。"
また、インタビュー記事のなかでも胚培養士さんにご登場いただき、お話を伺っています。
"その結果、当院では導入前と比べて受精率が約6%も上昇。採卵日から翌日まで使うだけで、これだけ受精率を上げられるのは画期的なことだと思います。
胚の選別や胚の発育が良くなるかどうかについてはまだまだ分析や研究が必要だと思いますが、受精に関しては導入後、すぐに結果を出せるものだと確信しています。"
■胚の成長を観察したり、記録したりできるって本当? タイムラプスのこと、教えて!
いかがでしたか? 高度不妊治療に取り組むチームの一員として活躍する胚培養士は、成功率を左右する大切な人材ですね。クリニック選びの参考にもできそうです!