〜妊活中から始める母体管理〜俵史子先生の生殖周産期講座
コラム 不妊治療
〜妊活中から始める母体管理〜俵史子先生の生殖周産期講座
妊娠がゴールではなく、母子ともに元気で出産することが最終目標。妊娠糖尿病について、周産期専門医の先生にお話を伺いました。
妊娠がゴールではなく、母子ともに元気で出産することが最終目標です。俵IVFクリニックでは産科に移る妊娠12週まで診察する「生殖周産期外来」を新設。今回は妊娠糖尿病について、俵史子先生と周産期専門医の村林奈緒先生に詳しいお話を伺いました。
※2018年5月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.38 2018 summer」の記事です。
Pick up
●妊娠糖尿病って?
妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて発見された糖代謝異常です。妊娠により引き起こされる状態で、妊娠前から糖尿病と診断されている人や、妊娠中に明らかな糖尿病と診断された場合は妊娠糖尿病に含まれません。
POINT
排卵障害や肥満、高齢の方は妊娠糖尿病のリスクが高まります。
不妊治療の段階から血糖管理を
妊娠すると血糖値が上がりやすいの?妊娠糖尿病はなぜ起こる?
妊娠糖尿病の検査はどのタイミングで行う?
妊娠中の初期と中期の2回、採血によるスクリーニング検査を行って、妊娠糖尿病かどうか確認します。この検査で陽性と判断された場合はブドウ糖負荷試験を行って確定診断をするのですが、もともと日本人はインスリン分泌が少ない人種であることに加え、高齢妊娠も増えてきているので、最近は妊娠糖尿病と診断される人が増えてきています。割合でいえば全体の8.5%程度。11~12人に1人くらいは妊娠糖尿病になるといわれているんですね。
妊娠初期に関しては、随時血糖値(食事をしていても構わない)が95または100mg /dl以上で陽性と判断されます(村林先生)。
妊娠糖尿病になると赤ちゃんにどんな影響がある?
妊娠糖尿病になりやすい人の特徴や予防法は?
当院ではこれまで受診した患者さんの症例を集計して、どのような人が妊娠糖尿病になるリスクが高いのか調べてみました。まず家族歴。ご家族に糖尿病の人がいる場合は通常の2・13倍発症しやすい。それから排卵障害のある人。排卵障害はPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の方などがなりやすいのですが、PCOSでなくても月経周期が長いと2・96倍と、3倍近く妊娠糖尿病のリスクが高くなります。さらに体重過多でBMIが高い人が2.6倍、年齢が高い人は1.3倍という結果が出ています。
妊娠糖尿病を予防するために、当院では妊娠糖尿病のリスクが高い方に不妊治療の段階からアプローチして、リスクを減らす試みをしています。たとえば肥満の人には食事指導や運動療法を取り入れるなど、血糖が上がりにくい状態を普段から心がけるように妊娠前から指導しています。当院で妊娠糖尿病になった人は全体の2.6%(2017年統計分)。一般的な発症頻度は10%近くですから、やはり妊娠前からの管理が大切だといえるかもしれません(俵先生)。
先生から
・妊娠する前からきちんと管理すれば発症をかなり低減できる可能性があります
・妊娠糖尿病の治療は食事療法が基本です。管理が良ければ母児のリスクは低減します