グレードの高い受精卵を 移植しても妊娠しません
コラム 不妊治療
グレードの高い受精卵を 移植しても妊娠しません
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※2019年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring」の記事です。
- マリーさん(37歳)からの相談
2回の体外受精で妊娠しません - 多囊胞性卵巣と診断され、そのほかの検査ではヒューナーテストがあまりよくなかった以外、精液検査も含めて問題ありません(AMHは2.24ng/ml)。体外受精を開始し、高刺激のゴナールエフ®注射で採卵6個。うち6個受精しましたが、胚盤胞まで育ったのは2個(グレード4AA)。1回目の移植では、判定日7日目にhCG2mIU/mlで妊娠せず。2回目の移植当日のE2は355.1pg/ml、P4は7.69ng/ml、子宮内膜13.9mmでしたが、判定日7日目(BT7)にhCG2mIU/mlで妊娠しませんでした。このような結果で何が原因なのでしょうか。2回ともhCG2mIU/mlという判定ですが、着床すらしなかったのでしょうか。検査結果で数値が飛び抜けて悪くはなかったのに、妊娠が成立しないのはなぜでしょうか。
- まとめ
- ●良好な受精卵を移植しても、結果がすぐに出ないことも。早めに治療の継続を。
●ほかに原因がない場合は、着床の窓のずれや慢性子宮内膜炎などが隠れていることも。
グレードのよい受精卵を2回移植されていますが、妊娠しないのは、なぜでしょうか?
グレードのよい受精卵(胚)を移植しても、なかなか妊娠が成立しないのは珍しいことではありません。10回以上の移植でようやく妊娠する方もいますから、根気よく治療を続けていくことが大事ですね。
一方で、良好な受精卵が2個ともダメだったということは、最近よく言われている「着床の窓(着床の時期)」がずれているとか、慢性の子宮内膜炎の存在なども考えられます。妊娠のためには、着床の窓が開いている時期に子宮に受精卵を移植する必要があります。ただしその時期には個人差があるといわれています。また、子宮内に炎症や癒着を起こす子宮内膜炎がある場合も、着床が難しいとされています。ほかの原因が考えられない場合は、子宮内膜の最適な着床時期を特定するERA(子宮内膜着床能検査)や、子宮内感染症に関する菌がないかどうかを調べるEMMA(子宮内マイクロバイオーム検査)などのオプション検査をおすすめします。
hCGの妊娠判定値について教えてください。
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は、妊娠中に胎盤の一部から分泌されるホルモンです。マリーさんが通院されている施設のように、胚盤胞の移植7日目にhCGで早期診断を行うという報告も聞きますが、当院ではこの方法を実施していないので詳しいことはわかりません。当院では、体外受精を行った場合、仮の排卵日から15日目、あるいは胚盤胞の移植10日目に、まず尿中のhCGの判定、その間に血中のhCGを測定し、妊娠判定を行います。多くの場合は、hCGの値が100mIU/ml前後を超えると妊娠(生化学的妊娠)と判定されます。また、実際に着床しているかどうかを調べるためには、妊娠5週目に超音波検査で胎囊(赤ちゃんを包む袋)を確認する必要があります。胎囊を確認して、はじめて臨床的妊娠と判定することができます。
マリーさんは採卵からの再スタートになるそうです。今後のアドバイスをお願いします。
37歳ですので、あまり期間を置かずに早めに治療を行ってください。現状にくじけて1年以上も治療期間を空けてしまうと、時間の経過とともに妊娠率はどんどん低下していきます。
今回の採卵個数は6個ですので、もう少し採卵できてもいいかなという印象です。ただ、周期によって発育卵胞数は異なりますから、次回はたくさん採卵できる可能性はあります。どのような排卵誘発法で行ったのかがわかりませんが、前回と同じ方法でもいいと思います。もし排卵誘発法を変える場合は、マリーさんはPCOS(多囊胞性卵巣症候群)とありますので、アンタゴニスト法などがいいでしょう。2回移植されているので、次の採卵も十分できる時期だと思います。今回は残念ながら妊娠には至りませんでしたが、このまま早めの治療を続けていけば、1年以内に妊娠できる可能性はあります。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring
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