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卵子の老化とは?その意味を知り、いかに向き合うのか

コラム 不妊治療

卵子の老化とは?その意味を知り、いかに向き合うのか

40代の不妊治療で知っておきたい「卵子の老化」。治療内容や選択肢として考えられることは? セントマザー産婦人科医院の田中温先生にお話を伺いました。

2017.8.22

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卵子の老化とは?その意味を知り、いかに向き合うのか


田中 温 先生(セントマザー産婦人科医院)




 



晩婚化が進むなか、ARTの平均年齢は40歳という現実


一般的に、40代は卵子の質が確実に落ちていて、仮に妊娠しても流産率はとても高くなります。個人差はありますが、42歳までは治療次第で結果が出る可能性はありますが、それ以上の年齢になると難しい。不妊治療の助成金を受ける女性の年齢が43歳未満というのも、そのような理由に基づいているのです。

晩婚化に伴い、女性の不妊治療を開始する年齢も高く、高度生殖医療(ART)を受ける平均年齢は40歳。「子どもが欲しい」という希望に対する治療ですから、「卵子の老化」は非常に高い壁となり、悪者としてクローズアップされて当然でしょう。しかし、まずは「閉経」という現象について正しく認識していただきたいというのが私の考えです。


NGワードではない? 閉経の意味を正しく理解する


哺乳類で閉経があるのは人間とシャチとゴンドウクジラだけで、ほかは死ぬまで産み続け、産み終えて死ぬ。ではなぜ、人間は閉経するのでしょうか。人間は種を保存し残す過程で、出産に伴う死や健康を害するものをなくすために閉経という現象を手に入れたと言えます。女性の閉経が50歳だとしたら、閉経後も30年、40年とそれまでの人生と同じくらい長い歳月を生きることができるのです。これは女性にとって素晴らしい贈り物です。そのために、年齢とともに卵子の質を落とし、数を減らしていき最終的にゼロにする、妊娠しない、妊娠しても流産する、というとても合目的な進化です。40代以上の不妊治療は人間の自然の流れに反していて、結果が悪くなるのも当然なのです。女性なら誰もが逃れられない現象であると同時に、女性が健康で長生きするために手に入れた進化でもあるのです。その観点で40代の不妊治療について話を進めていきましょう。

現在の不妊治療は、医者も患者さんも可能の限りを尽くそうとします。最終的に子どもを授かることができる患者さんもいますが、妊娠率は約6%と低く、染色体異常などによる流産率は約60%まで跳ね上がり、ほとんどの夫婦はARTでも子どもを授かることができません。日本の人口動態調査から出生率1.8%、年間30万人は子どもが生まれなければ100年後の人口は現在の半分以下に減ると危惧されるなか、現在の出生率1.3%、そのうち不妊治療で生まれる子どもは年間約4万人程度。これが平均年齢40歳の不妊治療の限界なのです。

終わりの見えない治療に疲れ果て、金銭的にも苦しくなり、子どもを授からないまま治療をやめていく。治療中に夫婦仲が壊れ、離婚に至るケースも珍しくはありません。では、ARTでも難しい夫婦は、いつ諦めるのか、いつ方法を変えるのか。私は、不妊で苦しんでいる夫婦がそれでも子どもを強く望んでいる場合は早い段階で「養子、もしくは卵子提供を視野に入れてください」と伝えます。日本ではまだ卵子提供の条件が厳しいのですが、高い確率で子どもを授かることができる台湾での卵子提供を選択する夫婦は急増しています。台湾は国レベルで卵子提供をサポートするため、当院では希望されれば台湾のクリニックを紹介します。

里親・養子縁組制度は各自治体にあります。血縁を重んじる日本人の国民性からか、抵抗感のある方も見受けられますが、「子どもを育てたい」という観点から選択肢の一つとして考えていただきたいです。


人生を大切にしてこその治療を心がけて


国は女性管理職の割合を2020年までに30%にすると掲げていますが、妊娠出産してもキャリアが失われない環境が整わなければ晩婚化はさらに進むでしょう。行政、国政にはいつまでも先送りにせず真剣に考えることを望みます。

女性には「子どもを産みたい」という母性本能があります。これは男性には想像もできないほどとても強いものです。遺伝子的に卵子の老化は逃れられないのに、母性本能を捨てきれないからこそ、40代の治療はつらく、苦しいものになっているケースも多いでしょう。だからと言って、気持ちまで老化してはいけません。心折れず前向きに、どれだけ自分のモチベーションを高く保てるか。今後も続く二人の人生がベースにあることを忘れずに、ネガティブな意識に惑わされず、幸せに生きることをモットーにしていただきたい。それが、40代はもちろん、現在進行形で不妊治療を頑張っているすべての年代の皆さんへの私からのメッセージです。




田中先生より まとめ


閉経は素晴らしい贈り物。この先も続く人生の幸せのために、最善の方法を夫婦で考えて。



 



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お話を伺った先生のご紹介





田中 温 先生(セントマザー産婦人科医院)


順天堂大学医学部卒業。越谷市立病院産科医長時代、診療後ならという条件付きで不妊治療の研究を許される。度重なる研究と実験は毎日深夜にまで及び、1985年、ついに日本初のギフト法による男児が誕生。1990年、セントマザー産婦人科医院開院。日本受精着床学会副理事長。順天堂大学医学部客員教授。「腹腔鏡のスキルアップと日々の研究・実験に全力を注ぐため、6時間睡眠を心がけるなど健康に気遣うようになりました」と語る田中先生。提携企業の社員の未受精卵凍結をサポートするという新しい取り組みにも着手したそうです。


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出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Aummer
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